先日、NHKの「日曜美術館」という番組で田中一村(たなかいっそん)が特集されていました。
田中一村は‘日本のゴーギャン’と言われ知る人ぞ知る画家で、50歳で奄美大島に渡りその生涯を島で終えた孤高の画家です。最近は、自伝映画が公開されたり展覧会が開催されたりと人気が出てきています。
私は学生時代から奄美大島が大好きで、奄美の自然に魅了された一人です。当時まだあまり観光地化されていなかったので、手つかずの南国の自然がとても素晴らしく夏毎に訪れていました。今でも何年かに一度は行きますが、郷土料理、碧くすみきった海、南国ならではの人々の温かさなど魅力は尽きません。
10年ほど前だったと記憶しています…、泊っていた宿の方が「ここから10分ほどのところに立派な郷土資料館や田中一村美術館などがある公園が出来たんですよ〜」と教えてくれて何気なく訪れたのです。そこで田中一村という画家を知ることになりました。
田中一村は栃木生まれで幼少のころから絵の才能があり、東京芸術大学に進み画家への道へ入ります。同期には東山魁夷などそうそうたる顔ぶれだったそうです。同期の画家たちが次々と支持者の賛同を得ていく中で、自信作の落選などを突きつけられた一村は永住の地を求めて旅をし奄美大島へ渡るのです。
奄美では質素な一軒家に住み、人々と交流を持ち、庭で育てた野菜と味噌などを食べ生活していたそうです。そんな生活のなかで精神が研ぎ澄まされ安定し、自分自身の中で昇華させ独自の素晴らしい芸術をつくりあげました。
田中一村の絵には迫力があります。枠からはみ出んばかりの大胆な構図・南国の強烈な光と影のコントラスト・鮮やかな色彩でアダンやアカショウビンやソテツなど奄美の自然が多く描かれています。
一村の生き方を知るにつれ、大自然の生と死を偽りなく真正面から描いた彼の絵に引きこまれる人も多いそうです。
今、千葉県の美術館で田中一村展が開かれていて大盛況だそうです。
独特な筆致や強烈なメッセージが、私たちが生きていく上での羅針盤になってくれているような、そんな気がします。